書籍のご紹介・介護記録の学校

介護記録の学校

介護記録の学校

ケアプランに沿った記録が書ける!

日総研出版社より発行

初版発行:平成18年3月30日発行

初版第4刷:平成19年11月17日発行

【主な内容】

  • 介護記録のイロハを理解する。
  • ケアプランに沿って、根拠に基づいた介護記録を書く。
  • 質の高い介護記録を書く技術・観察力を習得する。

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はじめに

介護記録の実践と研究のまとめは、平成16年『介護記録の学校』(日総研出版)に著し報告いたしました。これをご覧になった介護福祉系大学の教授より「現在の介護記録の考え方・書き方は、かっての方法とは随分違ってきましたね。現場が、このように前進しているのであれば大学でも時代に合わせた教育が必要ですね」とご意見をいただきました。また、介護福祉士養成学校の先生からは、「『介護記録の書き方がわからない』と卒業生が相談にきます。どのように教えたらいいでしょうか? 介護現場では記録は必須ですが、当校では、施設の実態に即した介護記録の在り方、観察したことの文章化、ケアプランと記録の関係などについて全く教えていませんでした」という相談を受けました。

介護記録は、時代の流れにともに少しずつ考え方・書き方が進化しています。過去10年を振り返ると、4つの変革の時期があったように思います。

第1の変革は、平成5年以降のケアプランの導入でした。それ以前の介護記録は「○時、レクリエーションを実施」「○時、トイレ誘導」などの簡単な実践記録、「熱があり病院を受診し点滴をしてもらいました」「腹痛を訴えるので看護師に報告し対応してもらう」「熱37.0度・脈拍78」などの観察記録、看護記録に習い「排便(+)排尿(-)」「主食10、副食8割摂取」「発汗なし」「腹部膨満・悪心・嘔吐」などの専門用語を用いた記録が多かったことを覚えています。

それまでは、「〜思う」「〜であろう」などのケア側の主観が入った書き方は不適切とされ、客観的事実のみを記載することが正しい書き方と認識されていました。

私の勤めていた介護老人保健施設はケアプランを導入したことにより、“チームケア”の考え方が浸透することになりました。各職種が役割を分担することで、看護と介護の専門性が明らかになってきました。介護スタッフは、看護師の補助者ではなく入所者の生活に密着し、楽しみ・生きがいとなる生活面のサポートを担い、看護師は、その専門知識を生かし、健康の側面から生活をサポートしています。その結果、それぞれの専門性を生かした記録が必要になってきました。

第2の変革は、平成12年度の介護保険法施行による影響です。この法律によって介護保険施設は、ケアプラン策定、実践、記録が必須となり、記録内容・方法に試行錯誤することとなりました。

介護現場では、「今は、このようにかかわる必要がある」と判断したこと、「このようにかかわると笑顔が見られた」と、効果や成果を申し送っています。その際、「つらそうにしていたので」「楽しそうにしており」など主観を入れて、サービスの妥当性、ケアの判断・根拠も報告しています。口頭での伝達事項を明記するために、これまでの記録の書き方・考え方を修正する必要が生じました。ケアスタッフが正しい主観により、反応や効果を推察し、チームメンバーに記録で正確に伝えなけらばなりません。このようにケアプランは、これまでの介護記録の書き方・考え方を変えたのです。

第3の変革は、平成15年度の介護報酬改定で、「ケアプランの交付」が義務づけられたことによる影響です。本人や家族へケアプランを定期的に渡す機会が生じ、一般の人からもケアプランが注目されるようになりました。継続利用される場合、次のケアプラン立案の根拠を説明する必要が生じ、モニタリングの際に日々の記録の必要性が高くなってきました。

第4の変革は、平成17年度の「個人情報保護法」全面施行による影響です。この法律によって、「記録の開示請求があれば開示する」ことが義務づけられ、介護記録の質が真に問われることになりました。利用者が記録内容を閲覧することを前提に、ケアスタッフ・利用者・家族にとって必要な内容、偽りなく誤解を受けない書き方、利用者満足度の高い内容、自信をもって開示できるサービスの質を保証する介護記録が求められるようになってきたのです。

このように時代の変遷とともに記録へのニーズが高まるなか、今回は介護記録の考え方・書き方・方法などを著してみようと考えました。介護現場の様子がわかるように現場の状況を図説し、いつ、誰が記録するのかといった記録の際のルール、観察したことをどのように文章化するのか、記録におけるエビデンス、ケアプランと記録の整合性などについて、これまでの介護現場での学びをまとめてみました。

ケア現場の実態をイメージしていただきながら介護記録の書き方のノウハウをつかんでいただければ幸いです。本書の発行に当たりご協力いただいた関係施設、日総研グループ広島事務所の石原敏行さんに紙面を借りて深謝申し上げます。

著者  津田祐子

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