書籍のご紹介・チームでつくる施設ケアプラン

チームでつくる施設ケアプラン

チームでつくる施設ケアプラン

専門職チームで施設のケアプランを作成する方法を提案

中央法規出版より発行

初版発行:平成18年11月10日発行

初版第2刷:平成18年12月20日発行

【主な内容】

一般的に「ケアは客観的評価が困難である」といわれるが、本書では、この課題をクリアするために、各専門職の観察項目一つひとつを「データ」と考え、「必要なケア」「自立度」「満足度・充足度」などを測り、専門職チームで施設のケアプランを作成する方法を提案する。

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はじめに

チームでつくる施設ケアプラン

介護保険制度は今年で7年目を迎えます。2000(平成12)年頃のケアプラン(介護サービス計画)は、給付管理業務マスターのため在宅の介護サービス計画書に重きがおかれていました。2003(平成15)年になると、介護サービス計画書の交付が義務化され、「利用者が〜したい」と希望する内容で「ポジティブなケアプラン」の記載が推奨されるようになってきました。

一方、施設のケアプランは大きな変動がなく、給付管理は不要であり、ポジティブなケアプランといっても自らが話すことのできない重度の人がいたり、「利用者が〜したい」と望んでも実現不可能な内容もあるなど大きな改変はみられませんでした。

2005(平成17)年、介護保険制度の見直しが行われることとなり、施設ケアプランに影響する内容が打ち出されました。施設に入所している要介護高齢者の多くが、低タンパク傾向があるとの調査結果があり、対応策として栄養ケア・マネージメントをしっかり行い、栄養改善計画を立案すること。加えて、要介護状態からの改善を図るため、リハビリテーションケアマネジメントを行い、多種職が協働のリハビリテーション計画を立案すること。そして在宅復帰を推進するようにと指導されたのです。これは、利用者にとってたいへん喜ばしいことです。

しかし、十数年の歴史があるケアプランに加えて、栄養ケア・マネージメントやリハビリテーションケアマネジメントが必要とされた理由はなんなのでしょうか。それは、施設のケアプランが絵に描いた餅になっていたか、成果・効果が十分評価されていないか、あるいは、施設のケアプランを査定するツールがなかったなどの原因があるのでは・・・・・・と推察します。

施設のケアプランは、標準様式のサービス計画書があり、「施設サービス計画書(1)」には利用者・家族のニーズを明記し、「施設サービス契約書(2)」には利用者は何ができるのか、どのような援助が必要かをアセスメントし、総合的な援助計画を記載します。しかし、これらのサービス計画書だけでは、ケアプラン立案の根拠を客観的に立証できませんし、説得力に欠けます。

一般的に「ケアは客観的評価が困難である」といわれてきました。この課題を解決しなければ、ケアプランの妥当性を説明できません。そこで、ケアであってもカテゴリー別に、関連する項目を集め、各項目を一つひとつデータと考えれば、全体数に示すことが可能であり、「全体数」対「該当数」で比率を求めればケアの定量的評価が可能となるのでは・・・・・・と考えました。

ケアプランの善し悪しは、施設の体制整備が影響するので「利用者ばかりではなく、サービス提供側を定量的にアセスメントやモニタリングすれば施設側を客観的に評価・査定でき、管理することも可能になる、評価は両側面から行いたい」と思いました。

このような考えのもとに、1996(平成8)年以降オリジナルのケアプランを研究してきました。利用者を自立度から評価する「自立度アセスメント表」、施設側のサービスの充足度を評価する「充足度アセスメント表」、施設サービスに対する満足度を評価数する「満足度アセスメント表」は、グラフで視覚的に把握しやすい評価ツールです。その他「施設ケアモニタリング表」「必要なケアのアセスメント表」「施設日課アセスメント表」などを考案し、コンピュータを用いて瞬時に作成できる方法を取り入れています。

チェック項目は、医師・看護師・介護職員・PT・OT、栄養スタッフ、生活相談員の専門性を活かした内容で構成されており、多忙な現場を考慮して無理のない策定方法を採用しています。多種職が協力し合えるケアプラン手法です。

2002(平成14)年には研究の成果が認められ、創意工夫功労者として文部科学大臣表彰をいただくことができました。最近では「過去と比較しケアの効果をいろいろな角度で測るアセスメントツールは大変興味深い。このツールを障害者施設や在宅サービスにも応用できませんか」と関心を示していただけるようになってきました。今後、さらに研鑽を重ねたいと思います。

入力から策定まで一巡で無駄がなく、標準化したチェック項目はスタッフの教育資料となり、出力されたアセスメント表はケア選定の根拠をしめしてくれます。その結果、科学的で実証的なモニタリングが可能になります。ケアプランの成果は「利用者の状態が前回よりもよくなった」「満足度が高くなった」「計画どおり実践できている」と客観的に評価できますので、是非試していただきたいと思います。

今回の出版にあたりご尽力いただきました中央法規出版企画部 須貝牧子氏、関係者の方々に深謝申し上げます。

著者  津田祐子

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