日記
vol.002(2008年4月23日) メールマガジン第2号より
こんにちは 津田祐子です。早くも12月、師走を迎え、振り返るとあっと言う短い1年でした。
4月15日は、思いもよらぬ天からの恵みを頂戴しました。
「今だからお話できます。あなたの努力が認められました。ケアプランの研究で文部科学大臣賞を受賞できましたよ。」と、さる方より突然お電話いただきました。「一体何が?・・・、それは何ですか?」と訳が分からない。そういえば「あなたの研究や実践内容について詳細を聞きたい。」と言われたことが1年位?前にあったが・・・すっかり忘れていました。
受賞式の19日は、祖父が50歳で(今の私と同じ)他界した日でしたから偶然とは思えず、祖父が見ていてくれたのかしら・・・と感慨深いことでした。
「これで、やっとわかってくれる。」という嬉しさと、「今からが本番、スタートだわ。」と決意と責任が新たになりました。
恩師から「おめでとう!! “禍福は糾(あざな)える縄のごとし”とはこのことね。今までも大変だったけど、これからもいろんなことがありますよ。でも、人間一生の内、何かに一生懸命になるチャンスってあまりないことだからしっかりやっておくこと。振り返ったとき、きっと良い思い出になると思う。」と激励の言葉を頂き、母からは「そうなれたのは、人様のお陰。精進努力することが恩返し。」と言われ、感謝の気持ち一杯だったことが昨日のようです。
○ 私とケアプラン
ケアプランとの出会い 第2回
・・・前号から続く・・・
「高齢者ケアプラン策定指針」では、1事例のケアプラン策定に当たり初めに約350項目のチッェクを行います。その作業が、当施設の場合ケアワーカーが参画しなくてもすべての項目のチェックが終わってしまったので疑問を感じたのです。
“なぜ?”と行き詰まっていたところに突然、身震いするほど嬉しい感動を体感しました。今でも思い出すとジ〜ンと胸が熱くなります。その夜、悩んでいた私は暗い霧の中をさまよっておりました。深夜2時! 突然、目の前の霧がスーッと退き、陽光が足下から広がってくる・・・、まるで映画ドラマのようなシーンが現実に起こったのです。
感動が先に沸き起こってきました。次に宝物を見つけました! 私が探していた「未知のもの」、それは「生活」でした。介護職は利用者の方の生活を支えている! 生活なのだから観察項目はもっと沢山ある! 「なんだ、そんなことか」と思われるかもしれないが、実は私はそんなことが分からなくて悩んでいたのです。そして、なぜケアワーカーがチェック合わせ会議の際、意見を言わずにいられたのかがわかりました。看護師も共通の業務として行っている項目だったので、看護師がすべてチェックしてしまった故でした。チェックリストには、ケアワーカー業務の専門性が満たされていないのではないか・・・。
介護ならではの特異性があるチェックリストが欲しい! よし、それならオリジナルなケアプランを作ってみよう!と。
平成8年4月18日深夜2時、ケアプランは、私の運命を変える非常に劇的なスタートをきったのです。
・・・最近(2002.12)では「あの頃の婦長は、何かに取り憑かれていたみたいだった。」と、理事長夫妻、現場スタッフからも思い出を語られますが。
3. ケアワーカーの価値
最初は、要領よくやれるように「高齢者ケアプラン策定指針」のテキストの一部を抜き出してやってみようと考えた。しかし、省略すると、問題領域の検討の際、問題が拾えなくなり手を抜けないとわかった。
ケアワーカー主任自作のケースカンファレンス記録やら日誌を持ち帰って、机の上に並べ、読んでは考えた。
この2年間を振り返ってみた。平成6年3月15日に開設した当初は全くの素人の集まりで平均年齢21歳というケアワーカーが介護業務についた。泣いたり笑ったり、励ましたり叱ったり、いろいろあったが、よく耐え努力し頑張った。「あの人が有り難うと言ってくれた。」と嬉しそうに報告に来る。「早うお迎えがこんかいな。と言う人がいる。どうしたらいいか?」と相談に来る。
レクリェーションも自分達のアイデアと思いやりでやる。ネタがワンパターンになってきた。勉強会があれば行きたいと、向上心も旺盛である。言わなくても経費節約し、手作りで何でも作る。いつの間にかレク用品が出来、次の誕生会の企画や準備を始めている。
入所者とスタッフの感動するシーンも沢山あった。 施設では看護師より介護職員が多く配属される。生活が大きくウエイトを占めているからで、介護職はこの施設を大きく支えている。私は、人間の価値は、物、金、財、学歴、資格よりも心であると思っているし、知識があっても冷たい人は看護、介護職には向かない人だと考えている。介護職員が難しい用語に悩むことなく、卑下せず、思いやりや気づきを発揮できるようなケアプラン策定システムであって欲しい。
4. 各職種の役割
まず専門職別にチェックリストを作成するにあたり、それぞれがどのような役割を担っているか、自分なりに考えてみた。
・医師
施設長のS先生(ドクター)の立場について私なりに推察した。医師なので、入所者90人+ディケア20人の方々に対して、医療面での全責任を365日持っておられる。
自宅にいても、子供さんを連れて外出中であれ、携帯電話が追っかける。医師としての宿命かも知れないが、精神的負担は計り知れないと思う。老人保健施設は医療設備が少なく、薬や検査は必要最低限に限られる。要介護高齢者は複数の疾患をもっている場合が多く、本人や家族から病歴すら確認できな
い人もある中で、あらゆる科の治療に関わり、急変事態にも家族に理解を得られる医療が求められる。
だとすれば、チェックリストや行動計画書はこのような現状を勘案したものが必要である。医師自身が受け持つことと、指示しスタッフに依頼するもの、評価や今後の予定などが必要項目となるだろう・・・。
・看護
老人保健施設における看護は、何より細かな観察がポイントである。ここは病院と違い入院時検査や正確な診断がでていない人が多いので、見て、触れて、どんな病気が発生しようとしているか、未然に発見し、大きな事態になる前に手を打つ。90+20人の方の看護を、日勤3〜4人の看護師数で請け負うのであるから。
医学的知識に基づいたケアができるようケアワーカーを指導し、チームで協力協働する。
・ リハビリ
当老人保健施設では、PT(理学療法士)OT(作業療法士)ST(言語療法士)の配置基準からいえば1,5人である。しかし、リハビリテーションを十分やれる人数?と疑問を感じる。入所者90人の方全員に毎日行うのはとても無理である。
集団でのリハビリ、個別的なリハビリと対象者の状態に合わせて行っている。作業の中で培われる喜びや楽しみ、グループワークでの友達作りなど生活を活性化できる。
心と体の機能評価はPT・OT・STらの専門分野であり、他の職種が行う移動介助やレク(レクリェーション)などに適切かつ必要なアドバイスを行っている。
考えるに、医師、看護、リハビリは、医療面の専門職種としてのチェックリストが必要なのではないか・・・。
○ 元デイケア主任へ送った言葉
彼は、以前は学校の教師をしていたが福祉の仕事がしたいと転職してきた。明るく、行動力があった。その熱意が認められ、主任となった。
ある日の終業後、暗い表情で「どうやって主任業務をこなしたら良いでしょうか?」と相談に来た。部下への指導で行き詰まっているようだった。翌日、参考になればと私の考えを「管理読本」としてまとめ彼に送った。
- 業務分担は スタッフの活動への道標でありわかりやすく かつ 正確に示すこと
- 管理者の見ていないところで 善行をするような職場にしなければ本当の安心 繁栄はない
- 管理とは 努力を救い ずるさを制し心の指標を正していく これが管理
- あなた達の動きが 言葉が 私を育てる なんとありがたきこと
- 人様の意見は ありがたきもの 解決は もう、できたも同然
- 管理とは 他者を思うと出る“行為” これが管理である
- 管理とは 上司に部下に 安心してもらえる“手法” これが管理
彼は、とても喜んでくれて数年、大事に持っていてくれたようである。努力が認められ、他の事業所に管理職で出世した。
きっと今も頑張っていることだろう。