日記

vol.003(2008年5月9日) メールマガジン第3号より

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こんにちは 津田祐子です
2003年、干支はひつじ、年賀を頂き羊の絵を見るとふっと気持ちがなごみますね。私も見習って、羊のようにふわ〜っと包むような暖かさとゆとりのこころを培いたいです。数年前にこんな詩を作りました。

『穏やかな人生は 心一つでおくれるもの 
心のあり方への追求 人生の究極の楽しみ 
最大の欲望はこれかもしれない。
私はものすごい 欲張りな人間である 』

このように考え、自分探しをして数年になります。

人生下り坂を迎えるこの頃は、今までの無理からか、足腰が痛み好きなゴルフやダンスもままならなくなってきました。そのような状況になって、やっと自分のことや周りのことを落ち着いて考えられるようになったなあと思います。そして、もう私の残りの人生は何日かしら?と試算してみれば以外と少なくて25年生きるとしたら、365日×25年=9125日、明日になれば1日減ります。仕事は定年まで10年あるとして、365日×10年=3650日しか仕事できない、考えてみれば、命も仕事もやがて終わりがくるのですね。そう考えると"今""この時"も大切なひとときだと実感できます。

まだ数年は研究をしたいのですが、沢山は出来ませんから「ひとつのこと(ケアプラン)を徹底して研究すること」と「穏やかな自分探し」にこだわってみようと思います。そして、先々のことは詮索せず"今"を大事に行動し、振り返った時良い思い出になるようにしたいです。

ところで、私の考案によるケアプラン作成ソフト『トゥルー・アセスメント』が公開される運びとなりました(Windouwsパソコンで動作します)。デモ版は無料でお試し頂けますので是非ダウンロードしてみてください。(ソフトの紹介はこちらから>>

私とケアプラン

ケアプランとの出会い 第3回

(前号から続く・・・>>)

ケアプランに必要な職種別のチェックリストを考案するため、まず各職種の業務分析が必要です。そこで、老人保健施設における各職種の役割について、私がこれまで知り得た経験上で考察し、前号では医師・看護・リハビリの職種について触れました。
これら3つの職種は、要介護高齢者のケアに置いて医療面での専門職として位置づけられるので、ケアプランではその特性を活かしたチェックリストを作成する必要があると考えました。
今回は、その他の職種の役割について、私が行った考察を当時を振り返ってお話しします。

4.介護老人保健施設における各職種の役割

・相談指導員
相談指導員は、90床の老人保健施設では1名配置するよう基準が設けられている職種である。平成6年頃は、老人保健施設の人員配置基準には、この職種の資格の定義はなかったし、新規開設する老人保健施設では、保健や福祉、医療などの経験の無い人でも相談指導員に就くことがあった。

現場の実際では相談指導員が相談業務以外の経理事務、デイケア運転手、設備管理やボイラー係も請け負う。老人保健施設の運営基準には、デイケアの運転手を○名置きなさいと書いていない。しかし、開設翌年に受けた県の職員による実地指導において「相談指導員にデイケアの運転をさせないように。相談業務に専念できるように人員を確保をしてください。」と注意を受けた。その理由は、家庭状況の把握や在宅復帰の指導、ソーシャルワークなどの実践と記録が乏しく相談指導として実際の業務実績を証明できなかったからである。

しかし、私は「運転をさせないように」という言葉に ?疑問を感じた。開設当初は婦長であろうともデイケア送迎車の運転や施設の掃除も行ったが、その経験はケア現場の実態把握にとても役に立ったから・・・

送迎中の老人の表情や会話に少し注意を向ければ、性格やら人間関係、要望や不満、いろいろなチェックが出来て問題点が拾えるしプランに結べるのである。送迎してみると、掃除が行き届いた家に笑顔でお迎えに飛び出してくる嫁がいる人もあれば、一方には、草が生い茂り荒れた庭や畑があり不自由な体を支えながら一人寂しく家の中に姿を消す人もあり、家庭や地域での人間関係や生活上の課題がわかる場合がある。送迎中の車内でも、利用者同士の会話から問題を発見する事も多く、個別的なケアプラン立案に必要な情報が拾える。このように考えると、相談指導員の業務は、施設の中に居て利用者や家族に対面して行うばかりではなく随所にあると思う。

相談指導は、施設内外の場面で"気づきの目"を持って利用者や家族と関わり、観察や課題をきちんと記録しケアチームで情報を共有できるように、かつ、必要に応じて検討すること。そのためには相談指導の経験が浅くても発見や見落としを防ぐ観察事項を標準化し客観的にチェックできる様式が必要と感じた。

・事務
入所者やデイケア利用者とのケアにおいて忘れてならない職種は、事務である。
気づきがあれば、赤裸々な問題が拾える。例えば、利用料の支払い状況一つを取り上げても延滞があるか、支払いが遅れているか、支払額に不満があるのか等、問題のあることに気づき対策が立てられる。チェックすれば、事務だけで解決できない問題もあるはずである。
また、県外に住んでいる家族から遠距離電話がかかる場合、その利用者が歩行や移動ができる人か把握しないで長い時間待って頂くようでは申し訳ない。また職員への電話の取り次ぎも同様に、すでに夜勤明けで退勤したか、今どのフロアで業務しているか等を把握せず、あちこち問い合わせる不手際はさけたいものだ。

事務室に併設した売店コーナーには、毎週パンや果物の販売日があり平日も飴や雑貨、日用品が並んでいる。買い物は楽しみの一つであるが、利用者の中には糖尿病や肥満がありながら飴やパンを数個買う人もあり、病気の増悪、偏食や低蛋白状態を増長させてしまう。このような時、病棟との連携を十分にして、事務員も利用者の状態を把握しておくことが必要である。

ケアプランは、利用者や家族が安心できるような質の良いケアサービスを提供するのが目的であり、事務員もケアチームの一員として重要な役割を担っている。

・厨房
人の健康上で『食事』は、一番大切である。しかし、入所者の食事を見ると好き嫌いや拒食、多食、早食い、遊びながら食べる、むせる、嚥下せず何時までも口中に溜める、誤嚥、無歯顎、咀嚼障害など沢山の問題がある。「利用者が食べてくれない。」と病棟スタッフは栄養士に相談し、代替え品や献立、好みの食べ物や嚥下・咀嚼能力に応じたメニューに変更の依頼をしなければならない。厨房スタッフが食事介助に来たり食事風景を見学に来ない態勢下では、看護、介護との情報交換は密に行う必要がある。また治療食が必要な人も多く、老人保健施設とはいえ病院並に食事区分が要求される。

利用者の食ニーズを尊重し豊富なメニューを設定、味付けや盛りつけの工夫、家庭的な雰囲気作りが求められている。そこで、要望を伺うと、あれが嫌い、これが好きと遠慮なく言われるが個別的なメニュー作りも大変なことである。中には「有り難い。もったいない。」と言ってくれる数人の入所者もあるが・・・

腎炎食や高血圧治療食などは全量摂取してこそ治療効果が上がるはず。塩分制限している食事に対して「水くさい。味がない。」と言い塩からや佃煮、梅干しやのりを忍ばせて食べている状況を見れば病棟スタッフは頭を抱えてしまうのだ。

調理員もケアプランに参加してもらいたく、私は厨房職員全員にこんな質問をした。

私:「皆さんは、食べる楽しみを提供する義務があると思う。」
スタッフ:(・・・皆、大きくうなずく)
私:「ところで、食べる楽しみって、何ですか?」
スタッフ:(・・・? 全員考え込んでいる・・・)
私:「自宅で料理する時、家族に何を食べたいか聞くでしょう? これで『願いがかなう』という食べる楽しみを与えられますよ。」
スタッフ:(納得!)
私:「次に、いろどりを考えた料理や盛りつけするでしょう。つまり2つ目は、『見る楽しみ』を提供しています。」
「食欲をそそる盛りつけやいろどりであればじっくり味わって食べますから、3つ目は『味わう楽しみ』です。」
「4つ目は、味わって美味しかったら沢山食べて腹一杯となって、『満足感』ですね。」
厨房スタッフ:(全員ああそうかと納得している・・・)
私:「では、自分が作った食事の出来映えについて"何で評価"しますか?」
スタッフ:(・・・再び考え込んでいる・・・)
私:「料理を出した時の子供や夫の顔を見て、食べかた、残す量などを見て調理の出来映えを自分で判断しているのではないですか?」
スタッフ:(・・・そうだ、そうだと納得している)

「では、当施設でその評価ができているでしょうか?」と問いかけた。それというのも配膳車に乗せるまでが厨房の業務だったからで、実際にお膳を利用者のテーブルに運ぶのは病棟スタッフであったからである。顔を見合っている厨房職員からの答えを待たず私はそこを退室した。

暫くして、管理栄養士がやってきて「話しを聞いて相談した。食べている場面を厨房スタッフも見にゆきます。」と言い、早速に病棟に来ることになった

・師長(婦長)
  ところで師長としての私の業務であるが、開所後2年間は何でもこなす雑役婦のようなものであった。日中はこれでもかとばかり問題が起きる。入所者間の諍い、利用者からの不平や不満、家族からの苦情、業務上のミスなど「今日は一日穏やかだったねえ。」と言える日が何日あっただろう。

常に毎日が戦場で、あっという間に1日が過ぎ、仕事が残り残業、それでも処理できなくて自宅に持ち帰り深夜まで書類整理に明け暮れることも多い。手間が無いから運転手もした。得られるものは何でも吸収しておくようにしたが、これが全体を管理する上に非常に役に立った。

 例えば、リネン庫の中に物を取りに入ると、雑然とした置き方、埃をかぶった棚、廊下や居室は有る程度の掃除が出来ているが・・・あまりの汚さにがっくりしながらも反省させられる。掃除の担当を決めても十分出来ていない。これはなぜか?と考えてみる。自分の家ではできているのに? 指導できていないからか? 忙しくてそれどころではないからか? いえいえそうではなく、スタッフがやる気を出せる業務体制が整備できていないことが原因の根幹にあるだろう・・・

 ケアプランは、良いケアを提供することが最大の目的である。そのためには、システム=態勢作りが先決であり、管理者の力量が問われる。私がやらねばならないことがここにある! 管理者の任務は、職員が安心して働ける組織作りであり、そのためには報告・連絡・相談が徹底できる業務体制、チームケアを円滑にするために職種間での調整業務、スタッフが主体的に活動できる環境整備、スタッフへの指導・教育などを実践しなければならない。

・清掃員
最後の専門職が清掃の人と言えばびっくりされるかも知れないが、案外、この人がスタッフの知らない情報を把握していることがある。私の勤める施設では、業者委託しており清掃のおばちゃんと言う人は、うちの職員ではない。しかし、入所者にとっては、職員であろうがなかろうが関係ない。身近にいて身の回りを綺麗にしてくれ、職員のようにうるさく言わないからつい油断して本音を話すこともある。

だから、この方から問題事項を拾えるようにしておくとよいだろう。

ケアプランへのスタートライン

老人保健施設のケアプランのチェックリストの指針ができた。
それは、各専門職の特性を活かし、(1)経験が浅くてもチェックできること、(2)他の職種でも理解できること、(3)各職種の業務の手を止めることなく効率良くチェックできること、(4)全職種のチェックにより利用者の状態や課題を多面的に報告すること、(5)用紙の無駄も最小限に押さえること。
これらを考慮したチェックリストを元に、ケアプラン策定のステップに踏み出そう! 利用者、職員が安心できるケア体制の整備を図りながら・・・。

(平成8年4月20日 記)

最近の出来事

若いスタッフが燃えている! スタッフの目つきが真剣で、きびきびした動きになった。その理由は、病棟をユニットケア態勢に変えたからである。
ユニットケアというのはグループホームなどで行われている少人数制の介護であるが、最近は、老人保健施設でも取り入れられるようになってきている。とはいってもユニットケアの話しを聞き始めた頃は、とても当施設では建物の構造と配置人員から考えても無理だと考えていた。

しかし、ケアプランの態勢が整ってくると次にモニタリングやマネジメントに進むことができ、利用者満足度を高める手段としてやらねばならないという意識が育ってきた。大規模集団のケアでおこりやすい人権軽視や個々のニーズへの対応の困難さは、職員が数年抱えてきた悩みだった。今、業務改革というメスが入った。しかもスタッフが主体的に取り組むという状況で。

90人の入所者に対して、今までのような機能的ケア態勢から、フロアー別に少ない数で家庭的雰囲気を提供し「おーい」と呼べば何時でも「はい」と飛んでいける利用者が安心できるようなケア環境をつくろう、話せない人にふさわしいレクもやりたい、休日や夜間入浴もしたいと手厚いケアを考案している。活発な提案がスタッフ間で毎日飛び交い、休日も出てきてパソコンの前に座っていたり何かを作り始めている。

各階のリーダー、サブリーダーが企画案を提出してくるので主任や副主任はアドバイスを行い暖かく見守っている。若手が伸び、主任達の業務負担は軽減した。

ユニットケアはやれないと思っていた気持ちはどこへ飛んでいったのか、やろうという気持ちになるとできるものだなと思う。そして、やらされる仕事ではなく、主体的にやる仕事、楽しい仕事に変わりパワフルに始動している。

そのほほえましい光景にほかの部署も良い刺激を受けて、自分達も頑張らなくちゃと意気揚々。「更衣室での会話内容が変わったね。」「あの子がこんな会話しているよ。」と嬉しい先輩の声が聞こえてくる。

さあ、明日も頑張らなくちゃ! 若いスタッフにエネルギーをもらいながら・・・

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